視察日 平成24年10月11日から12日まで
視察地 岩手県盛岡市
都市の連携と新しい公共―東日本大震災で見えた絆の可能性―
この報告書を書いたのは、3月11日で、あの大震災からまる2年経過した日です。今、震災が風化していないだろうか。あの震災をそして、いまもなお仮設住宅で避難生活を送っている方々のことを忘れてはいけない、と感じます。
今回の大震災では、自治体相互の水平支援が、大きな効果をあげた。大阪府・和歌山県が岩手県を、兵庫県・徳島県・鳥取県が宮城県を京都府・滋賀県が福島県をそれぞれ支援するという関西広域連合のカウンターパート方式による水平支援が大きな効果をあげたことが注目された。
また、姉妹都市や友好都市の関係や災害都市協定の関係による国内外の自治体からの組織的な支援も高く評価された。本市でも災害協定の関係で石巻市への支援を継続しておこなっています。自治体機能の喪失という前例のない中で改めて相互に助け合うという連携支援の在り方がクローズアップされ、これまで縁がなかった都市同士にも、あるいは、民間企業、NPO、NGOなど市民団体などとも新たな「絆」が生まれた。
若者のボランティアによる救援活動の広がりは顕著で、それに加え、災害支援関係のNPO・NGOの全国横断的なネットワークの発足、被災地への後方支援活動の実施がされたが、そのようなボランティアの力をどのように受け入れて活かしていくのか、地域の社会福祉法人などの地域資源の活用も含め、 被災地にとって大きな課題です。
また、被災者の安否確認や情報共有にツイッター・フェイスブックなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)が大きな活躍をみせた。総務省の調査では、1995年の阪神淡路大震災の時には、インターネットの普及率は、3%に満たなかったが、2009年末には92.7%まで普及し、今回の震災では、情報の伝達方法が大きく変化しました。本市でも取り組み済。
新しい公共の広がり
今回の震災で、新しい形のボランティアとして注目されたのが市民ファンド。被災した中小企業が今回の震災からたちあがるのに、1口1万円程度の市民ファンドがいくつも登場し、企業の再建資金を助けただけでなく、営業再開後の販路開拓という点でも大いに役立った。このように、震災直後の支援物資などの投入から、被災地の自立支援に徐々に切り替わるなかで、市民ファンドが果たした役割は大きいと思います。
仙台大学の高成田教授の講演のなかで、次の言葉が印象的でした。日本列島周辺は、地震の活発期に入っているようで災害は忘れたころにやってくるどころか、明日に起きても不思議ではない地域があちこちにある。今回被災しなかった都市は、被災した都市との連携・絆を強めるとともに、震災やその後の復興における教訓をしっかり学び、今後に生かすことが大切です。
早稲田大学の西尾教授の講演―――学生ボランティアと新しい公共大震災は、災害ボランティアに対する大学の積極的な関与があげられる。従来、大学の社会的な使命は、研究と教育とされたが、大学を取り巻く環境も変化し大学の社会的使命として、社会貢献をあげる大学も登場。これにより、新しい公共の担い手として、大学の社会における存在感も増してくると思われます。
岩手県立大学の村山教授―――岩手におけるIT支援の経験から
岩手県内のライフラインの状況等の情報提供で必要とされた支援とは
①情報収集と提供―――安否情報確認・ライフライン情報収集・災害ポータルサイトの構築他、道路状況・水・電気などの可視化もおこなう
②情報処理環境整備――インターネット接続支援・PCやプリンタの機器提供
③避難所管理――――避難者の情報入力をプライバシー管理に秀でた企業ボランティアに依頼。他に物資配布の情報支援
災害時には、多様な人々が関わり、それぞれ異なる価値観や経験を持つ人です。多くの作業は、未経験で、睡眠不足・疲労がたまり、感情的になりやすい。状況は刻々と変わる中での判断、面識のない人との連絡や相談などあり最善を求めるのは難しい面があります。しかし、問題の処理や意思決定は、即座に決断しなければいけない。ためには、災害支援活動において、相手をどのように信頼するか、信頼処理能力が大変重要になってきます。
岩手県陸前高田市長のことば
陸前高田市の復興は,街並みや産業で達成されるものではなく、心の復興こそが真の復興と思っています。これまでの全国の皆様との「絆」を大切にしながら、心豊かに暮らしていけるまちづくりを1歩1歩進めていきたい。
陸前高田市は平塚JCと交流があり、昨年の平塚の七夕まつりには、地元の気仙町けんか七夕の動く七夕が参加して人気を博したところです。今後も、七夕を通じての文化交流が進展することを期待しています。
又、今回の視察で感じたことは、
①震災の教訓を生かせ。学べ。つなげる。
②新たな「絆」づくり、広域連携、ボランティア、NPO,大学生、
など、いつ起きるか分からない大地震への備えを常に忘れないこと。